2015年4月1日水曜日

「地域資源を活かす」藻谷浩介氏、南三陸町で語る


3月21日、南三陸町ポータルセンターで開催された藻谷浩介氏の講演に行って来た。
藻谷氏は「里山資本主義」の著者で地域エコノミスト。日本政策投資銀行参事役を経て現在、日本総合研究所主席研究員。長年、地域経済再生のために全国で提言を続けている。
全国の市町村、海外も59カ国訪問しているとのこと。それも繰り返し行かないと意味はないという
充実した資料収集、データの読込み、分析、そして自ら現地に赴き自らの目で見て確認した上ての話しは説得力があった。


今、日本経済が低迷しているのは、”循環・再生の不全”が問題だという。もう少し細かく言うと、少子化による社会の縮小、エネルギーの使い捨て、資本の停滞(貯蓄)、土地、建物利用の停滞など。



【地方は資源の宝庫】


 私たちは知らず知らずのうちに県外/国外産の安いものを求め、資金を県外に出しているのではないか、と問いかけられた。確かに、車を使えばガソリンを使う。電気を使えば、火力発電で油を使う。原子力発電で消費されるウランも輸入している。近年、パスタ、ワイン、小麦粉の消費量は増え、豆腐の原料の大豆や、家畜飼料も輸入していると聞く。間接的な消費も含め、食の面でも多いに海外に依存している。

 森林資源をうまく利用しているのがオーストラリアだという。年間で自然に再生される森林資源の70%を利用、エネルギーも補い、集成材に加工された建築材は、低層・中層建築に使われる。年間に1兆円弱の木材資源を輸出し、外貨を稼ぎ、林業は収入の高い職業として若者に人気があるという。

そう考えると、日本の里山は資源の宝庫だ。
日本の地方は、森林も、耕作できる土地もある。海に近ければ、海洋資源も豊富。しかし、その豊富な資源も活用する人材がいないと何にもならない。
企業の森として利用されている南三陸町の杉林




【人口減少は足下から】


 三陸沿岸部は震災で人が流出し、人口減に陥ったというが、では、震災が来ていなかったら問題はなかったのだろうか?答えは「否」。「国立社会保障・人口問題研究所」(http://www.ipss.go.jp/)の統計によると、南三陸町の場合、2010年に17,430人だった人口が2020年には14,450と予測されていた。そのうち65歳以上がしめる割合が、2010年には約30%、2020年は約35%だ。少なくなる総人口のなかで、高齢者の割合は増える。若者が仙台や首都圏の大都市へ出て帰ってこないという現象は震災後に始まったことではない。




 では、若年、働き盛りの若い年代が大都市に流入するのを大都市は良しとするべきなのかというと、それも「否」。東京都の場合、2010年に1,316万人だった人口が2020年には1,331万人になると予想されていた。総人口は増えているが、0-15歳、15-64歳の人口は減っている。つまり、65歳以上が増えるのだ。若い人が大量に流入する都市では、一時的には良くても、皆同時に歳をとる。高度経済成長期に人気だった団地がこぞって高齢化しているとも聞く。そんなものだろう。

 65歳以上の高齢化率が高いのが、札幌市、福岡市、広島市、仙台市などの政令指定都市や首都圏の大都市。現役世代が低いのは、一次産業を基幹産業にする地方ばかりかと思えば、意外と大都市に近い交通の便がよく、比較的暮らし易いと思われている町もそうなのだ。より便利な大都市に人は流れて行く。

 今、被災地では勉強会や体験ツアーなどで、伝統や文化をつなぐ活動や地域資源の再発見が活発におこなわれている。大震災のダメージを乗り越えて新たにつくられるまちはより力強いものになっていくだろう。


by 編集長 河崎清美





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