2015年6月25日木曜日

どろんこ田んぼの観察会

6月21日、「どじょういる?」どろんこの網を持った子供たちは、どろんこになりながら思い思いに田んぼに住む生き物たちを追っていた。
登米市迫(はさま)町森地区にある「はさま自然村」の田んぼで、親子観察会が開催された。

参加の家族はほとんどが非農家。
1歳のお子さんを抱えるお母さんからは、「子どもが田んぼを見る度に『入る、入る』というけど入らせてあげられなかったので、嬉しいです」という声が。田んぼが広がる登米市だけれど、住民が農家ばかりとも限らない。
そして、農業も大規模集約化がすすみ、大人が機械で整備するので、子どもが田んぼに入る機会も少なくなっている。









 低農薬、無農薬にこだわりを持っ て作付けをしている田んぼなので、生きものも沢山。
  遠慮なくドカドカ入る子供たちにヒヤヒヤだったが、稲はけっこう強く、少々傾いてもまた起き上がるそうだ。

企画の中心になっている千葉伸一さんの口からは、
「森地区でこんな風景初めてみたかも知れない」という




座学では、南三陸町ネイチャーセンター友の会の協力も得て、紙しばいでわかりやすく田んぼと生きもの関係を教えてもらった。
 人は昔、水を求めて川の側に住み着いた。そこは、川の氾濫で被害にあうこともおおかったけれど、そこに湿地帯ができ、生きものも多く住み着くようになったそうだ。人はその地に田んぼをつくり、米を収穫する。湿地帯にいた生きものも、田んぼに移り住み。生きものにとっても、人にとっても利をもたらすのが「田んぼ」だそうだ。


手づくり紙芝居に子どもだけでなく、大人もつい見入ってしまった。

『田んぼを見る度に入るって言い出したらどうしよう』と心配するお母さんを尻目に、したり顔


ゾロソロ歩く親子。スタッフからは、「森地区でこんな風景初めてみたかも知れない」という言葉が漏れた。車社会の現代では、こうした風景も少なくなっている。





ザリガニを手でつかまえてご満悦



カエルを見る度、興奮!



小学校では「バケツ稲」といって、子供たちそれぞれが、稲を育てる 授業もあり、この企画の中心人物である千葉伸一さんも講師として小学校で「バケツ稲」を教えている。しかし、それでは田んぼの感触がわからない。子供たちに田んぼに入って、直接田んぼを知って欲しい、という思いを持っていた。


田んぼだけではない。シロツメクサで冠づくり、運転手ごっこ、田んぼの周りにあるもので思い思いに楽しんでいた。



そのうち本当に運転するようになるかな?


カエルにザリガニ、チョウチョにメダカ、カブトエビ、どじょう……。虫かごや水槽に入れた生きものたちはまた帰ってもらう。


田んぼのあとはトマトハウスでトマトのもぎ食べをして、子ども用プールで水遊びを兼ねてすっきりしたあとは、「イセヒカリ」「ひとめぼれ」「つやひめ」お米の食べ比べ。


無農薬なので、採りたてをすぐ食べても大丈夫

お米の食べ比べも。「お米によって全然味が違う」と会場からも驚きの声が!




心配していた天候にも恵まれ、それぞれに楽しめる一日になった。
今回の企画には、FORAATUNE宮城も入って一緒にすすめさせてもらった。一般参加者の「楽しかった」「またやってください」という声も嬉しかったが、若いスタッフが楽しみ、また開催したいと言ってくれたのは更に嬉しいものだった。

稲や野菜がスーパーに並んでいる状態だけでなく。畑や田んぼで四季折々の姿をみせている。そんなことを伝えるイベントを再び開催したい、と熱く語るスタッフ。また、楽しいことがはじまりそうだ。


by 河崎清美

2015年6月23日火曜日

人が集う場づくり1

6月20日、日も暮れかかった頃、南三陸町入谷地区の廃校になった小学校。宿泊施設兼レンタルスペースとしてリノベーションされ、地域内外の人に活用されている「さんさん館」で、トークイベント、「ヒトが集う地方、リノベから見えてきた新しい価値のこと」が開催された。
以前図書室だった部屋に年齢も立場も職種も違う人々が集った

今回紹介があった「medicala(メヂカラ)」のお二人は若いご夫婦のユニット。全国で古い建物をリノベーションして、人が集う空間づくりをしている。デザイン、ハード面を担当するのはアズノタダフミさん。おもてなしや食事を担当するのは奥さんのカナコさん。

現場に手を貸してくれた人とは、カナコさんの手づくりのおもてなしで食を共にし、コミュニケーションをとる。
「現場めし」https://www.facebook.com/genbameshi


真ん中左がアズノタダフミさん、左はカナコさん

二人はどこでも行く。その土地に住み、人と出会い、そこのものを使い、プロ、素人関係なく共に空間をつくりあげていく。ゲストハウス、 カフェ、そば屋、バー、施工主の多くはあまり資金も無い若者。多くの人を巻き込んで造ってきたお店は愛され、どこも繁盛しているそうだ。

詳しくは以下のページをご覧ください。
「Medicala / アズノタダフミ」https://www.facebook.com/medicala

 

現在進行中の気仙沼市馬籠地区のリノベーション現場

はがした床板は糠で磨いてまた使用する
素材にはその家の歴史も刻まれている










before

お手伝いに来た南三陸ブックスの助っ人と現場で記念写真
二人は、住まい兼事務所としてリノベーションした「メヂカラハウス」にはじまり「ゲストハウスnui(東京)」、「ゲストハウスtoco.(東京)、「cafe & bar totoru(東京)」
 「手打ち蕎麦くくり(愛知)」、「萩ゲストハウスruco(山口)」
 などを手がけてきた。

「メヂカラハウス」https://www.facebook.com/medicara
「ゲストハウスnui(東京)」http://backpackersjapan.co.jp/nui/
「ゲストハウスtoco.(東京)」http://backpackersjapan.co.jp/
「cafe & bar totoru(東京)」http://totoru.jp/
「手打ち蕎麦くくり(愛知)」https://www.facebook.com/pages/%E6%89%8B%E6%89%93%E3%81%A1%E8%95%8E%E9%BA%A6%E3%81%8F%E3%81%8F%E3%82%8A/531193496940478
「萩ゲストハウスruco(山口)」http://guesthouse-ruco.com/


 デザインとは おしゃれな外観をつくるものではないという。お二人の仕事をみていると、使われる場や使う人、素材、用途、それらを活かすことがデザインなのだと思われる。
共に、つくることを通して気持ちが一つになる。人が活きる。一つの磁場ができる。
 プロの技をみせる部分、素人のアイディアが光る部分、地域の素材を活かす部分、多様性が生み出す場は、多様な人が集まる場になっていく。
そして、その場は新しい価値や創造を生む場になってくるのかもしれない。
そんな場づくりを展開している「medicala(メヂカラ)」のお二人のお話は参加者への刺激になったようだった。


 全国で空き家の問題があがっているが、南三陸町、登米市でも状況は同じだ。空き家はあるがすぐには住めない。移住を決めたが、借りた場所は手を入れる必要がある。自分の家を改装し、店舗として使いたい。地域を訪問する人、地域の人が集える場所をつくりたい。人が集う場、住める場は切実に必要とされている。また。周辺は質の良い杉が育つ地域でもあるのに、木材が活用されていない現状をなんとかしたいという声もあった。


 勢いがついてきた。待っていても問題が解決しないのなら、自らが動く。住宅不足、森の活性化に弾みがつきそうだ。

  震災は被災地に地域外から多くの人々が入ってくるきっかけになった。一旦は故郷を離れた人も帰ってきた。そんな人々を中心に、地方 の暮らしについて考える会が南三陸町で2014年からはじまった「第二のふるさとカフェin南三陸」。そして今年(2015年)、南三陸町の本好きが集 い、本について語り、やりたいことをやろうじゃないかと始まった「みなみさんりくブックス」。今回はその二つの活動のコラボ企画。南三陸町と登米市からの参加があった。

仕事が終わってのイベント、食事付きがうれしい。
この日の料理はコミュニティカフェ、コモンズさんから。

by 河崎清美


2015年6月19日金曜日

一次産業をワクワクさせる出会いの場「宮城県北こせがれネットワーク〜Team Pigs〜」

6月17日、大崎市古川のウラバタケカフェに集ったのは「宮城県北こせがれネットワーク〜Team Pigs〜」の面々。

農家、畜産農家、林業女子、飲食店経営者、編集者、焼物屋さん、木工芸デザイナーなどなど、食と一次産業に関わる多様な職種の人が集まっていた。代表の伊藤さんは養豚農家。”Team Pigs”はそこから来ているそうだ。

夜で全容は見えなかったけれど、玄関の灯りには妙に誘われる
もっと明るいうちに来てみたい


この日は遅れてきた人もいるが、総勢15名程の人たちが集った


ここでは、若い世代の食や一次産業に関わる人たちが集り、お互いを知り、共に何かおもしろいことをしようとしている。
誰でも参加できるこの会は、毎月、第3水曜日に開催される。情報交換の場であり、それぞれの活動をアピールできる場でもある。全員が協力してイベントを開催することもあるようだ。
毎回「こせがれ授業」と題して、参加者が持ち回りでそれぞれの活動を皆に知ってもらうプレゼンテーションをする。
 この日は、美里町から参加のブシャンアケボノさんの発表。子どもの頃インドから移住して来たブシャンさんは、お父さんがインド料理店を経営している関係で子どもの頃から食に興味を持っていた。宮城県農業高校、県農業大学校で農業を学び、現在は有機野菜をつくっている。
インドでは、8割の人がベジタリアン。野菜もマメも香辛料も種類が豊富で、カレーには大量の玉ねぎを使うという。ガンの発症率も低いとのこと。


有機野菜づくりに込める思いを熱く語るブシャンアケボノさん。
野菜の保存方法にも興味をもっている。


「宮城県北こせがれネットワーク〜Team Pigs〜」代表の伊藤竜太さん
養豚農家の伊藤さんは、ブシャンさんと反対に子どもの頃から食卓にあがったのは豚肉



そのほか、「全国やきものフェア」、「どろんこバレー大会古川」など、それぞれが関わるイベントの紹介、新たに参加した人の紹介、新プロジェクトの提案などもあった。木づくりの食器をつくる工房秀の高橋さんは、もっと木づくりの食器をカフェやレストランで使って欲しいと活動する。この日は、昔田んぼで使われ、今は放置されている杭を何かに活用できないかという相談も持ち出されていた。

人が集まることで、思いもかけないアイディアが生まれることもある。あるところでは無用となったものも、別の場に行けば有用な資源になったりもする。そんな発想の転換も人が集まることで生まれてくる。

宮城には仙台を拠点にする「宮城のこせがれネットワーク」もあり、活発に活動している。
これからの一次産業を担う宮城の若者たちを見ていると、こんどはどんなことをやってくれるのか、楽しみは尽きない。


by 河崎清美






2015年6月2日火曜日

「NPO法人移動支援Rera」の報告会から学ぶ”おでかけ”の大切さと、”平時”への移行





 531日、NPO法人移動支援Reraの初めての報告会が石巻専修大学で開催された。
現代表の村島弘子さんとスタッフ。
オレンジ色の服がぬくもりを感じさせる。


 東日本大震災直後、石巻に入り、物資支援や泥だしをしていた札幌を拠点とするNPO法人ホップ障害者地域生活支援センターは、20114月頃から移動支援を専門とする「災害移動支援ボランティアRera」として活動するようになった。活動は徐々に地元スタッフに移行していき、20132月には「NPO法人 移動支援 Rera」となり活動を継続している。利用者数はのべ8万人、総合走行距離は25万キロ。需要は高い。

 報告では、震災直後の状況から地元スタッフへの移行の様子、日々の活動の報告等がされた。利用者の半数以上は、70代、80代の一人暮らし、二人暮らしである。9割は通院。その他、買い物、老人施設への送迎などもあるが、遠慮してなのか、「おでかけ」のための利用はあきらめている、という人が多いようだ。

震災直後、人気だったのはお風呂送迎。お風呂に入る前「もう死にたい」
と言っていた利用者が、帰る時には「生きていてよかった」と話していたと、
今では笑い話にもできることが、当時は切実な問題だった。


初期の手づくり看板


Reraボランティアの方々



廊下の展示を見ながら当時のことを思い出した人も多かった人も多かっただろう

 避難所から仮設住宅へ、生活も環境も時を追って変化してきたが、ニーズは変わらなかった。震災以前からの問題が震災で悪化し浮き彫りになったという。
 被災地では加えて、元々バス路線の通っていない地域への仮設住宅建設、病院の閉鎖や遠方への移転、家族構成の変化で送迎をしてくれる人がいなくなったなどの状況の変化に、さらなる対応が求められてきた。それでも、平成27年度までは、被災地の地域交通は、国土交通省の財政支援に支えられてきたが、それも終了する。今でも、全国からボランティアは集ってくるが、いつまでも外部ボランティアに頼ることはできないので、地元スタッフの獲得のため、講習会などを開催してきた。
 人材の獲得、資金繰り、 「平時」を取り戻していく過程での課題は山積している。


 地域交通政策やまちづくりを研究している福島大学の吉田樹(いつき)先生からは、「おでかけ」の意味と地方交通政策の現状について話があった。

福島大学の吉田樹先生











住民調査によると、移動販売車に来てもらったり、生活支援サービスを頼ったりするよりも、自らが足を運んで買い物をすることを望む声が強い。
「どうでした?」「いっぱい話したよ。久しぶりだったからね。」車の中で話されるたわいのない日常会話。そんな会話も一人ではできない。車の中でのなにげない会話、それが、こころの安定につながる。地域交通が、物理的に必要なものを求めることだけでなく、心の解放や体の機能を支えることにもつながる。
 地域交通事情は 被災地に限らず、どこの地方でも問題を抱えていることがらだろう。国も人口減少、少子高齢化が急速に進む今、現状に会わせる方向で、法律の改正なども行っているが、実際にマネジメントするのは地方行政になる。

 地方では、赤字経営や人材不足が問題になっているが、全く手だてが無いわけでもないだろう。地域の取組としては、事業者や地域の枠を越えた連携とネットワークが解決の糸口になり得る。
 栃木県や山形県での例も紹介された。 病院の外来時間、大型商業施設、鉄道駅、温浴施設へのアクセスを便利にするだけで、利用率も変わる。栃木県足利市では、おでかけできる範囲を広げ、本数を増やすことも利用率アップにつながり、高齢者以外の利用者も、収入も増えたそうだ。
山形市明治・大郷地区の「スマイル・グリーン号」はデマンド型タクシー(注1)として開始したが、地域住民との話し合いで、サービス水準を決めたり、「スマイル・グリーン号」を巡る各種イベントを通じ、地域に愛される「地域車」になっているという。

スマイル・グリーン号のイベントに沸く地元を紹介

 復興まちづくり計画では「生活難民」をうみださないよう土地利用計画ととも に交通戦略をかんがえなければいけない。そのためには、各自治体の「平時」の素地が大きく反映されるが、平時に地域交通の問題が表に出てくることはあまりないらしい。今まで問題視されていなかった問題は復興計画 にもなかなかあがってこないのが現実だということだ。
課題は山積しているが、地域交通の問題が表面化している被災地の今は改革のチャンスか もしれない。
 住民が自ら考え実行に加わってこそ、輸送だけでない福祉の可能性が広がっていくのではないだろうか。

by:編集長 河崎清美

注1【デマンド型タクシー】
ドア・ツー・ドアの送迎を行うタクシーに準じた利便性と、乗合・低料金というバスに準じた特徴を兼ね備えた移動サービス。
(「日本総研」ホームページより http://www.jri.co.jp/page.jsp?id=6953 )


NPO法人 移動支援ReraとNPO法人 地星社の恊働で実施されたアンケート調査の結果が、調査報告書、「宮城県沿岸被災地における移動困難者の状況調査〜石巻地域の移動困難者へのアンケートから〜」としてまとめられている。







報告会のあとは、カフェ市
(昨年オープンした福祉作業所が運営するカフェ)
のお菓子とソフトドリンクで交流会