2015年5月20日水曜日

女川ー”交流”が町を元気にする



【”交流”が町を元気にする】


2015年5月14日、女川に広島県福山市から7名が訪れた。「日本赤十字奉仕団」2013年から毎年有志を募って女川わを訪れているという。迎えるのは「女川桜守の会」http://sakuramori.minibird.jp/と女川町社会福祉協議会の皆さん。 一行と合流したのは、女川の平野部を見渡せる高台にある女川町地域医療センター(旧女川町立病院)の駐車場だった。
女川診療所の敷地からはかつて女町の中心部だった平野部を見渡せる
工事の様子を眺める女川桜杜の会のメンバーと福山市赤十字奉仕団の皆さん

「もうちょっと(病院が)高い、思よったが……」一年ぶりに訪れた福山市赤十字奉仕団の方からそんな言葉が漏れた。久々に来ると病院が思ったよりも低く感じるという。「かさ上げが進んだからなのかも知れないですね」と桜守の会のメンバーから声が返る。目の前の荒涼とした土ばかりの区画にはトラックばかりが走っている。一年前は、そこに倒れたビルがいくつか残っており、震災遺構として残すかどうかも検討されたが、耐久性、復興事業への影響などから「旧女川交番」を除き撤去された。わずかだが、新しい建物もできている。
同じ風景を見ても、毎日見ている人、たまに見る人、初めてみる人では感じ方も違うだろう。

女川中学卒業生が「千年後の命を守るために」と
募金を集めて建設した「女川いのちの石碑」

続いて、女川中学卒業生がつくった「女川いのちの石碑」の前で手を合わせたあと、新設された女川魚市場と震災後早い段階(2012年)にオープンしたトレーラーハウス宿泊村、エルファロの前をまわって、女川駅隣にできた「女川フューチャーセンターCamass(カマス)」で、交流会が開催された。

トレイラーハウスということを忘れてしまうような爽やかな空間。
敷いたばかりの芝生も一ヶ月後には青々とし、ピクニック気分も楽しめるという。

お互いの団体とメンバーの紹介から始まる。



女川桜守の会の設立の経緯、現在の活動などを丁寧に紹介していただく。
震災前、女川には沢山の桜があったが、多くが津波で流された。その中の一つ、旧第二保育所の園庭跡にあった2本の桜は、上部の2/3を津波に引きちぎられながらも、残った幹に芽を出し、3輪の花をつけた。希望の象徴としてなんとか生きて新たな花を咲かせて欲しいと願う人々の気持ちはつながり、「女川桜守の会」も結成された。手厚く保護された桜は、次々と新芽を出しながらも、たっぷりと塩を吸い込んだ土と夏の熱射の打撃でついには息絶えた。しかし、伐倒された桜から継ぎ芽をした後継樹は育ちつつある。人と人をつなぐ新たな芽も残し、この会も催されている。


赤十字奉仕団の方からは、 昨年、広島県西側の一地区で昨年ひどい土砂災害が起こった時、福山からも応援に駆けつけたお話があった。災害はどこで起こるかわからない。

説明を追加

福山の方々も女川桜守の会のみなさんも、それぞれに別の活動もしている。ひときわにぎやかになったのが、福山で布の絵本をつくって施設に配布している「きしゃぽっぽ」のサンプルを見せていただいたときだ。
おままごとセットのようなおにぎり、サンドイッチ、水筒、弁当箱など、手づくりで見事に再現されているのを見て女性たちは身を乗り出して見入っていた。そのうち女川にも現れるのかも知れない。



説明布でできた制作物を手に取る女川の人たちを追加

2013年から訪れている「福山市赤十字奉仕団」の委員長、過田さんからは、「本当に完成した時に、果たしてどれくらいの人口になっているのか、仕事はあるのか。若い人がどれくらいいるのか」ということが問題だという話しもあった。少子化、高齢化の波は全国に押し寄せている。もちろん、福山にも。人事ではないだろう。


また、「マスコミの報道だけでは伝わらない部分もある。現地で自分の目で見て、聞いてわかることもある」とこれからも継続して女川を訪問する意思を伝えた。

女川最後の訪問地は「きぼうのかね商店街」。まだかさ上げ工事が進むなか、植樹をすることはできないので、この敷地内に若い桜の木が保管してある。新芽がひらき、若い元気な葉が生い茂っていた。


「きぼうのかね商店街」で食事をとった一行は女川を後にし、岩沼へ向かった。「桜守の会」では、毎年100本桜を植え、1000年で10万本という夢ももっている。
福山市赤十字奉仕団の皆さんが来年訪れる頃には、市街地に青々と茂る桜を見ることができるかもしれない。



2015年3月21日に再開した女川駅は、温泉もある複合施設、「yupoppo(ゆぽっぽ)」を併設し、町内外の人々がくつろげる空間になっている。

女川駅/yupoppo


駅の隣にできたCamassは、「町内外の人々が集まり、新しい交流をすることで「新しい仕組み」を生み出し、町の活性化の一助になる場所となることを目的とした施設」(Camassホームページより)として、コワーキングスペースや会議室などもあり、各種イベント、さまざまな課題が議論されるフューチャーセッションも企画されている。近くには水産業体験館「あがいんステーション女川」(6月14日オープン予定)が建設中だ。

女川は、町が一体になって「おもてなし」の体制をつくっているようにもみえる。
震災後に訪れた多くの人も女川が変わる様子を見に来る楽しみもできた。

被災した町が訪れる人に力をもらい、元気になって来た町に今度は訪問者が力をもらう。それがどんどん広がっていけば、みんなが元気になる。それが”交流”というものかもしれない。

by  編集長 河崎清美














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